研究課題/領域番号 |
17014066
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菊池 章 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (10204827)
|
研究分担者 |
山本 英樹 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (20372691)
岸田 想子 広島大学, 医学部, 教務員 (40274089)
|
キーワード | β-カテニン / PKA / 翻訳後修飾 / SUMO / PIASy / 細胞運動 / GSK-3 / h-prune |
研究概要 |
本年度は発がん過程で重要なβ-カテニンの安定化機構とTcf-4の活性制御機構について新しい知見を得た。また、転移能の亢進している大腸がんや膵がんに高発現しているh-pruneの細胞運動促進の分子機構を明らかにした。 (1)翻訳後修飾を介するWntシグナル伝達経路の制御 (a)PKAによるβ-カテニンの安定化の分子機構------Aキナーゼ(PKA)はβ-カテニンのSer675をリン酸化することにより、β-カテニンのユビキチン化を抑制し、β-カテニンを安定化した。さらに、PKAはTcf-4の転写活性化能を亢進した。したがって、PKAの活性化はWntシグナル伝達経路を活性化することが明らかになった。本研究成果は大腸がんに非ステロイド系抗炎症剤が作用するメカニズムの一部を説明する。 (b)PIASyのSUMO化によるTcf-4の転写活性制御------SUMO化のE3リガーゼであるPIASyの35番目のリジン残基がSUMO化された。SUMO化の起こらないPIASyの変異体はTcf-4のSUMO化を促進せず、転写活性も亢進できなかった。したがって、PIASyとTcf-4のSUMO化による翻訳後修飾はWntのシグナルの転写制御において重要であることが示唆された。 (2)GSK-3とh-pruneによる細胞運動制御 GSK-3に結合する蛋白質としてh-pruneを同定した。h-pruneの発現が大腸がんと膵がんにおける浸潤能やリンパ節転移と相関した。RNAi法によりGSK-3あるいはh-pruneのノックダウンすると細胞運動が抑制された。h-pruneは接着班に局在し、paxillinやvinculinと共局在した。GSK-3はF-actinに沿って局在し、活性型のGSK-3とh-pruneは接着班で共局在した。GSK-3およびh-pruneのノックダウンにより、h-pruneを含む拡大した接着班が形成され、接着班のdisassemblyが損なわれた。したがって、GSK-3とh-pruneが接着班のdisassemblyを制御することにより、細胞運動を促進することが明らかになった。
|