研究課題/領域番号 |
17014066
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菊池 章 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (10204827)
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研究分担者 |
山本 英樹 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (20372691)
岸田 想子 広島大学, 医学部, 教務員 (40274089)
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キーワード | Wnt-5a / 翻訳後修飾 / 胃がん / 細胞運動 / 細胞接着斑 / 転移 |
研究概要 |
本年度はがん抑制能とがん促進能を有することが示唆されているWnt-5aによる細胞機能制御と胃がんとの関連について解析を行うた。Wnt-5aを単一蛋白質にまで精製して、質量分析を行なったところパルミチン酸化されていることが明らかになった。Wnt-5aはβ-カテニン依存性の転写活性に対する抑制作用があり、また、細胞接着斑のターンオーバーを促進することにより、細胞運動能を亢進した。パルミチン酸化はWnt-5aのこれらの機能発現に必須であった。Wnt-5aは糖鎖の修飾も受けており、糖鎖修飾はWnt-5aの分泌に必須であった。ヒト正常胃底腺におけるWnt-5aの発現を解析したところ、胃の増殖帯よりも深部で、主細胞に発現していた。Wnt-5aの発現を胃がん症例237例について検討したところ、70例(約30%)に高発現していた。また、Wnt-5aは腫瘍浸達度の高い症例、リンパ節転移を伴っている症例に有意に高く発現していた。さらに、5年生存率の確定している111例において、Wnt-5aは予後の悪い症例に有意に発現しており、これまでに予後との関連が報告されているEGFRやMMP-7も発現よりも相関関係が高かった。FRP2は細胞外でWntと結合して、Wntシグナルを阻害する蛋白質であるが、FRP2はWnt-5aの発現が亢進している胃がん細胞株の運動能を抑制した。また、Wnt-5a抗体も胃がん細胞株の運動能を抑制した。したがって、Wnt-5aは胃がん予後判定のマーカーになると共に、治療のための分子標的になる可能性が考えられた。来年度は、がんの浸潤転移におけるWnt-5aの役割をさらに明らかにすると共に、前立腺がんや大腸がん、膵がん、子宮がん、乳がん、食道がんにおけるWnt-5aの発現と悪性度との相関について解析する予定である。
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