研究課題
HB-EGFは細胞膜に発現するI型膜蛋白質であり、その細胞外領域は増殖因子活性を有する。細胞に様々な刺激が加わると、膜型HB-EGFはsheddingを受けHB-EGF-CTFを産生する。HB-EGF-CTFと同時に、sheddingされずに細胞膜に残るunshed proHB-EGFは、共にエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、核膜内膜に局在変化することをこれまでに明らかにしてきた。また、核膜内膜において転写リプレッサーと結合し、これらの機能を制御することを報告してきた。本年度では、まず、HB-EGF-CTFの標的リプレッサーとして新規に同定したZF50の機能解析を行った。ZF50は血管内皮細胞に比較的特異性を持って発現していることから、血管内皮細胞において何らかの機能を果たしていることが予測される。そこで、siRNAによるZF50 mRNAノックダウンを施した血管内皮細胞の特性を解析した。その結果、興味深いことに、血管内皮細胞増殖因子VEGFに対する細胞増殖能にはほとんど変化はないが、マトリゲル上で誘導されるネットワーク形成が、顕著に抑制されることが明らかとなった。このことから、ZF50は血管新生に関与する因子であることが予測されたことから、ノックアウトマウスを作製し、個体発生過程、並びに病態誘導における血管新生を解析した。ZF50-/-は予想とは大きく異なり、見かけ上は野生型とほとんど変化なく成長する。また、胎生期10.5日胚マウスの血管形成にも大きな以上は認められなかった。しかし、新生仔の網膜血管形成を経時的に観察すると、14日目までの網膜血管のネットワーク形成に大きな遅延が認められた。現在その分子メカニズムの詳細を解析しているところである。
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