研究概要 |
ヒトの肝細胞癌患者においてsuppressor of the cytokine signaling-3(SOCS3)遺伝子のDNAメチル化とその発現減少が報告されている。しかし、生体内における肝細胞癌発生におけるSOCS3の役割は解明されていない。SOCS3の発現低下の肝細胞癌への影響を調べるために、肝臓特異的SOCS3欠損マウスの解析を行った。その結果肝臓におけるSOCS3の欠損によりSTAT3の過剰な活性化が引き起こされ、STAT3の標的遺伝子であるVEGF,c-myc,cyclin-D1,Bc1-Xなどの癌促進に作用する遺伝子群の発現が促進されることがわかった。また肝臓特異的SOCS3欠損マウスは化学発癌剤による肝癌の発生が野性型に比べて増加していた。以上の結果よりSOCS3が肝細胞癌抑制遺伝子であることが明らかとなった。 またSpredに関してベルギー、フランス、アメリカとの国際共同研究によって神経繊維腫(NF)1型患者で変異を認めた。カフェオレ斑を持つが、NF1遺伝子に変異を認めない家族性優性遺伝のNF1様患者、5家系について第15番染色体上のSPRED1遺伝子に変異が発見された。ほとんどはナンセンス変異によるC末側欠失変異である。これらの機能を詳細に解析した結果変異体はドミナントネガティブな効果は認められなかった。SPRED1に変異を持つ患者は、カフェオレ斑、腋窩の雀卵斑、ヌーナン症候群様顔貌(眼間開離・眼瞼下垂)、巨頭症、注意欠陥障害・学習障害を示した。またこれらの表現型はSpred-1欠損マウスの表現型ともよく一致した。SpredがRas/ERK経路の抑制因子であることが遺伝学的にも証明された。
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