ヒトの肝細胞癌患者においてsuppressor of the cytokine signaling-1 (SOCS1)遺伝子のDNAメチル化とその発現減少が報告されている。しかし、生体内における肝障害におけるSOCS1の役割は解明されていない。SOCS1の発現低下の肝炎への影響を調べるために、肝臓特異的SOCS1欠損マウスの解析を行った。その結果肝臓におけるSOCS1の欠損によりSTAT1の過剰な活性化が引き起こされ、STAT1の標的遺伝子であるIRF-1、caspase3などの肝障害促進に作用する遺伝子群の発現が促進されることがわかった。また肝臓特異的SOCS1欠損マウスは化学発癌剤による肝癌の発生が野性型に比べて増加していた。以上の結果よりSOCS1が肝炎を抑制し肝がんの発症を抑える癌抑制遺伝子であることが明らかとなった。次にmyeloid系特異的SOCS1 cKOマウスの解析を行った。その結果SOCS1欠損マウスは突然変異誘発剤と腸炎誘導剤の組み合わせ(AOM-DSS)による炎症性大腸発がんに抵抗性であり、腫瘍数の減少を認めた。またB16メラノーマ細胞の移植の系においてもSOCS1-cKOマウスでは腫瘍体積の減少および生存率の増加を認めた。この作用はIFNγ欠損背景ではみられないことからおそらくSOCS1欠損マクロファージや樹状細胞がヘルパーT細胞をTh1型に誘導しCTLを活性化するものと考えられた。またマクロファージ自身もNO産生が増加しており腫瘍障害活性の亢進も認められた。
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