研究概要 |
私共は低分子量G蛋白質Rap2がHGK、TNIK、MINKの3つのMAPKKKキナーゼと結合することを見出し、Rap2のエフェクターと考えている。また、TNIKが上皮系細胞のbasolateral細胞膜に局在してJNKと無関係に細胞接着を制御することも見出し、Rap2はMAPキナーゼ経路と未知の経路を介して分化異常などがん細胞の異常形質に関与する可能性があると考えている。 未知の経路の解析では、各キナーゼに結合する蛋白質のアフィニティー精製と質量分析による同定を進めており、TNIK結合蛋白質として、トリコペプタイドリピート、アンキリンリピート、コイルドコイル領域、PDZドメイン結合モチーフを持つ200kDaの足場蛋白質を同定した。なお、TNIK自身も同定され、TNIKがホモ複合体を形成する可能性が示された。また、二次元電気泳動によりRap2、TNIKに依存して細胞内リン酸化が変化する蛋白質を複数見出し同定を進めている。 がん細胞の形質への関与については、転移性との関連を示唆する例を見出した。マウスで低分化型扁平上皮癌を形成するが殆ど転移しない親株から4種類の高転移株が樹立されており、親株はRap2を強く発現するのに対し全ての高転移株でRap2の発現が顕著に抑制されていた。親株ではRap2、TNIK、E-カドヘリンが細胞間接着部位に集積したが、高転移株では集積が見られなかった。高転移株にRapのGDP/GTP交換因子Epacを活性化するcAMPアナログを添加すると、親株に近い形態に復帰した。また、TNIKの優性抑制型変異体が細胞間接着形態の異常を引き起こすことを見出し、機構の解析を進めている。 さらに、MAPキナーゼ経路と未知の経路の制御に関する遺伝学的解析のため、TNIK遺伝子、Rap2A,B,C遺伝子についてコンディショナルノックアウトマウスの作製を進めている。
|