研究課題
動物細胞が分泌する細胞外マトリックス分子やそれを分解するマトリックスプロテアーゼは細胞外から、細胞の接着、移動、増殖、分化などを調節する。申請者らは、特にがんの浸潤・転移の分子機構の解明を目的として、ラミニン5、IGFBP-rP1/TAF、マトリライシン(MMP-7)などの細胞外マトリックス分子の作用を研究してきた。昨年度は主として以下の成果が得られた。1)ラミニン5の一サブユニットであるγ2鎖が浸潤先進部位で高発現し、がん細胞のin vivoでの浸潤性増殖を促進することを見出している。今回、ラミニンγ2鎖がそのN末端領域(ドメインV)を介してフィプロネクチン上での細胞接着や細胞運動を促進すること、またこのN末端領域を強制発現させた細胞はヌードマウス皮下で高い造腫瘍性を示すことが明らかなった。2)これまでにβアミロイドタンパク質前駆体(APP)分子内にMMP-2特異的阻害領域があることを明らかにし、10個のアミノ酸からなる配列を特定した。今回MMP-2とMMP-7の種々の部分から構築されるキメラ酵素を利用することにより、APP由来インヒビターのMMP-2選択性に関与する酵素側のアミノ酸残基を明らかにするとともに、MMP-2とAPP由来インヒビターの相互作用の様式を明らかにすることができた。この配列を利用して、さらに強力なMMP-2特異的阻害タンパク質の開発を進めている。一方、MMP-7の転移促進作用に関して、がん細胞膜上の標的分子としてアネキシンIIとC型レクチンの一種であるCLEC3Aを同定した。3)膜結合型セリンプロテアーゼであるマトリプターゼががんの増殖を促進することをすでに明らかにしている。その可能なメカニズムとして、本酵素が腫瘍増殖抑制因子であるIGFBP-rP1をはじめ、IGF結合タンパク質に属する数種のIGFBPを分解することを明らかした。
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