研究課題
E-cadherinによる細胞間接着形成が失われる事は、多くの上皮由来の癌細胞において、それらが浸潤性を獲得し悪性度を増していく事と密接に関連している。上皮細胞においてE-cadherin接着が形成される為には、低分子性G蛋白質であるArf6の活性が抑制されている事が重要である。細胞表面受容体であるEphAは、これも細胞表面に存在するephrinをリガンドとし、細胞同士の接触におけるシグナル伝達に関わる。我々は昨年度までの本研究において、EphAがArf6の抑制に関与している事を明らかにしていたが、今年度においては、その分子機構の詳細を明らかにした。即ち、EphA2は活性化されるとチロシンリン酸化されるが、Tyr594のリン酸化を介してNckのSH2領域に結合する事、NckはそのSH3領域を介してGit1のSLDに結合する事を示した。この事により、Git1がArf6に対しGAP(GTPase-activating protein)として機能し、E-cadherin接着形成の促進に関与する事を明らかにした。病理学的見地から、EphAの発現異常と癌の悪性度とが関連する事は様々ながんにおいて知られている。我々は、MDA-MB-231などの乳癌細胞においては、EphA2,Nck,Git1は発現しているものの、EphA2は活性化された時に速やかに分解されてしまい、その結果、EphA2/Nck/Git1経路が形成されがたいこと、この事が乳癌の浸潤性獲得(もしくは亢進)に関与していることを示す結果も得ている。現在、癌細胞におけるEphA2/Nck/Git1経路の異常に関してさらに詳しく解析を進めている。
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