研究課題
がんの浸潤転移形質と上皮組織構造の破綻は密接に関連している。本研究では、Rhoファミリーとその関連分子、上皮細胞の極性とジャンクション形成に関連する#16/LMO7、およびNectin-Afadin系細胞接着分子について、遺伝子改変マウスを作成し表現型解析を行ってきた。Rhoファミリーはアクチン細胞骨格系を制御する分子である。Rhoファミリー活性制御蛋白質であるRho GDIα/β二重欠損マウスでは、脾臓でのmarginal zoneリンパ球の減少、胸腺髄質内でのT細胞の貯留、骨髄での好酸球増加が観察された。従って、Rho GDIα/βはリンパ組織特異的にRhoファミリーの活性を制御し、リンパ球の移動および分化を協調的に制御することが明らかになった。肺胞・気管支上皮細胞で特異的に発現するLMO7の遺伝子欠損マウスでは、14週齢頃から気管支上皮の過形成が認められ、90週齢以降の約50%のマウスで、組織学的に腺がんと考えられる腫瘍形成が認められた。LMO7はヒト遺伝性乳がんの発症との関連が示唆されているが、肺がんの抑制遺伝子である可能性が示唆された。また、細胞接着分子Nectinの細胞内アダプター蛋白質であるAfadinの条件的欠損マウスを作成し、Nestin-Creマウスとの交配で水頭症の発症、Villin-Creマウスとの交配で炎症誘発物質DSSに対する大腸上皮細胞の感受性の亢進が観察された。Villin-Creによる条件的Afadin欠損マウスは生存可能であり、大腸上皮構造の発生過程および維持にはNectin-Afadin系が必須ではないと考えられる。しかし、Nectin-2の局在異常、cortical actin層の薄層化から、条件的Afadin欠損マウスの大腸上皮構造は機能的に脆弱であり、組織修復の過程でNectin-Afadin系が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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