1.癌における発現プロファイル異常の体系的解明 癌細胞の発現プロファイル解析 化学療法剤の選択および施行の是非を決定すべく、大腸癌、卵巣癌について補助化学療法施行症例の発現プロファイルの検討に着手した。 スプライシング変異及び染色体転座の検出 全エクソンアレイによる染色体転座の検出を行うべくデータ解析手法の開発を進め、胃癌、肺癌において新規融合遺伝子を同定した。 ゲノムおよびエピゲノム変異の解析 アレル別コピー数解析では、肝細胞癌、グリオーマ、肺癌等で染色体ホモ欠失領域が検出された。悪性グリオーマ28例中3例に認められたホモ欠失領域に存在する遺伝子を発現誘導することにより培養細胞、移植腫瘍の増殖抑制が認められた。MeDIP-chip法を用いて大腸癌及び肝細胞癌細胞において異常メチル化を受けている遺伝子の探索を行い、質量分析装置を用いて臨床検体でのメチル化プロファイルの検討を進めた。 2.「がん個性」診断アルゴリズムの開発 統合ゲノム情報による新規診断法の開発 乳癌および卵巣癌細胞株を化学療法剤にて処理してGI50あるいはIC50値と相関する遺伝子セットの抽出を進めた。それらをメタジーンとして用いることにより臨床症例の治療応答性の予測に利用の可否を検討中である。 3.新規バイオマーカーによる診断法の開発への展開 癌細胞に高発現する膜および分泌タンパク質の同定を進めた。肝細胞癌において高発現するROBO1蛋白が2段階切断を受け、C端断片が核内へ移行することを見いだした。また、肝細胞癌で高発現する遺伝子Notumはβ-catenin標的遺伝子であることを見いだした。腎細胞癌189例中139例(73.5%)にTLR3の高発現を認めた。リガンド刺激によって腎癌細胞株におけるインターフェロン産生およびアポトーシスが誘導され、TLR3依存的に相乗的な増殖抑制効果が発揮されることが判明した
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