1癌における発現プロファイル異常の体系的解明 染色体異常、DNAメチル化、遺伝子変異はそれぞれ発現プロファイルに反映されると考えられ、肝細胞癌100症例についてそれぞれSNPアレイ、Infiniumアレイ、エクソンシーケンシングによる解析を進めた。配列解析を行った25例中6例にβ-catenin遺伝子変異が認められた。 2「がん個性」診断アルゴリズムの開発 MeDIP-chip法にて大腸癌細胞株HCT116およびSW480と正常大腸を比較し、プロモーター領域が異常メチル化された遺伝子として新規メチル化マーカーを44個選出し、従来のマーカー16個と合わせた60領域のメチル化状態を質量分析法で定量解析したところ、大腸癌149症例は3つのエピジェノタイプに分類された。高メチル化群とBRAF遺伝子変異、中間メチル化群とKRAS遺伝子変異に強い相関が認められ、低メチル化群と合わせ、これらは大腸癌発生の異なる分子機構を示唆していると考えられた。KRAS変異(+)の中間メチル化群症例は有意に予後が不良であり、今回のエピジェノタイピングは臨床的にも重要と思われ、決定木によるタイプ判定法を開発した。 3新規バイオマーカーによる診断法の開発への展開 子宮体癌組織から抽出したゲノムDNAを用いてSNP解析アレイを用いた包括的アレル別コピー数解析およびマイクロサテライト不安定性(MSI)の解析を併せて実施し、予後との関連を検討した。アレル別コピー数解析は正常細胞の混入が避けられない臨床検体においてもPTEN遺伝子をはじめとするホモ欠失領域の同定および、コピー数変化を伴わないuniparental disomy(UPD)領域の同定に有効であった。コピー数変化の乏しい症例の半数はMSI陽性である一方、染色体不安定性陽性群は予後が不良であり、バイオマーカーとして有用であると思われた。
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