研究概要 |
高密度ゲノムアレイを用いて食道扁平上皮がん(ESCC)細胞で13q21.2ホモ欠失領域を検出し、標的遺伝子PCDH17を候補がん抑制遺伝子として同定した(Carcinogenesis,2010)。さらに、1q32-q41増幅領域の新規増幅標的遺伝子候補として、H3K36やp53K370にメチル基を付加しp53の不活性化するSMYD2を同定した(Carcinogenesis,2010)。SMYD2発現亢進のESCC症例は予後不良でありp53が正常例で特に予後不良が確認されておりESCCの個別化診断や治療標的分子の候補となる可能性が示された。さらに、肝細胞がん(HCC)においてがん抑制遺伝子型miRNA遺伝子を探索し、DNA過剰メチル化のエピジェネティック制御によって発現消失するmiR-124とmiR-203を同定した。両miRNAはHCCにおいて抗腫瘍活性を持ちその標的遺伝子としてCDK6やIQGAP1などを同定した(Carcinogenesis,2009)。また、神経芽腫(NB)には「腫瘍の自然消退」を認める予後良好型の存在が知られている。しかしその分子メカニズムは全く不明であった。独自開発のBACアレイを用いたDNAメチル化探索法(BAMCA法)によりLAPTM5(Lysosomal-associated protein multispanning membrane5)遺伝子が、NB細胞でメチル化により発現低下することを同定した(PLoS One,2009)。以上に加え、口腔がん(OSCC)細胞株の19q13増幅の標的遺伝子PAK4を同定た(Cancer Sci,2009)。PAK4はOSCCを含む頭頸部における蛋白レベルでの発現が亢進しており独立した予後予測因子となることが示された。PAK4はキナーゼドメイン点突然変異も報告されてきており、OSCCの新規がん治療標的になる可能性が示唆された。
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