研究概要 |
「特定研究領域4」の「分子疫学コーホート研究支援班」の支援の下に、10万人を対象とした日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)が開始された。本研究はこのコーホート研究参加者を主な研究対象とし、副次的に他の小規模な集団を対象とする。参加者の検診データ、研究目的で採取されたDNA、血漿、血清から、生体指標と遺伝子型の関連を横断研究により検索する。J-MICC Studyの検体については平成18年度も収集中である。そこで、平成18年度は2000年に収集したがん既往のない名古屋市の住民検診参加者の連結不可能匿名化されたデータセット、これまでに収集した北海道住民検診参加者のデータセット、名古屋大学大幸医療センター受診者データセットを用いてがん発生に関与する生体指標の関連について検討した。主な結果は、1.腫瘍マーカーCA19-9の血中濃度はLe遺伝子型およびSe遺伝子型により強く規定される。酵素活性のないlele型ではCA19-9は検出されず、Leアレルを持つ者ではSe遺伝子型と関連していることが確認され、更に喫煙者では低値となることを見出した。2.DNA合成とDNAのメチル化に寄与する葉酸はMTHFR 609TT型で摂取量を補正してもなお血清濃度は607CT型および607CC型に比べ低値であり、血清葉酸値の低い者では609TT型で血漿総ホモシステイン値が高いことを確認した。この関係はピロリ菌感染、胃粘膜萎縮の存在には影響されなかった。3.細胞増殖に作用するポリアミン値はODC 316AA型において血中濃度が高かった。また、今後コーホート研究にて有用となる少量多項目測定チップを使用して12種類のサイトカインを測定した。正常者についてはIL-8,VEGF, MCP1,EGFが測定可能であることが判明した。
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