研究概要 |
「特定研究領域4」の「分子疫学コーホート研究支援班」の支援の下に、10万人を対象とした日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)が開始された。本研究はこのコーホート研究参加者を主な研究対象とし、副次的に他の小規模な集団を対象とする。参加者の検診データ、研究目的で採取されたDNA、血漿、血清から、生体指標と遺伝子型の関連を横断研究により検索する。J-MICC Studyの検体については平成19年度も収集中である。そこで、平成19年度は平成12年に収集したがん既往のない名古屋市の住民検診参加者の連結不可能匿名化されたデータセット、これまでに収集した北海道住民検診参加者のデータセット、名古屋大学大幸医療センター受診者データセットを用いてがん発生に関与する生体指標の関連について検討した。主な結果は、1.少量多項目測定チップを使用して正常者100人について100μ1の血漿で12種類のサイトカイン(IL-1α,IL-1β,IL-2,IL-4,IL-6,IL-8,IL-10,VEGF,INF-γ,TNF-α,MCP1,EGF)を測定し、正常域にある者についてもIL-8,VEGF,MCP1,EGFが測定可能であることが判明した。2.IL-8はピロリ菌抗体陽性者で高く、胃粘膜萎縮があるもので低値を示した。この変化はIL-8-251Aアレルを持つ者に比べ、-251TT型の者で顕著であった。3.TNF-αの値はピロリ菌抗体陽性者で高く、更に抗体陽性者で胃粘膜萎縮がない者ではornithine decarboxylase(ODC)G317AのGG型の者よりもAアレルを持つ者でTNF-αの値が高かった。ピロリ菌感染が血中のサイトカイン値を上昇させ消化器外の疾患のリスクを高めることの機序が推測された。
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