研究課題/領域番号 |
17015023
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
戸口田 淳也 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40273502)
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研究分担者 |
中村 孝志 京都大学, 大学院医学研究科, 教授 (10201675)
中山 富貴 京都大学, 大学院医学研究科, 助手 (80335273)
楠崎 克之 京都大学, 医学部附属病院, 助教授 (30177993)
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キーワード | 肉腫 / 遺伝子発現 / 遺伝子診断 / 予後診断 / 分子標的治療 |
研究概要 |
65例の紡錘形細胞肉腫を用いたcDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析のデータから、遠隔転移発生の有無と相関した遺伝子として機能未知の遺伝子を同定した(仮称C7059)。C7059発現の有無は、治療法、FNCLCC分類による病理学的悪性度、発生部位、腫瘍サイズ、化学療法の有無等の因子を加味した多変量解析によっても、唯一転移発生と有意な相関を示した因子であった。定量的RT-PCR法による解析においても、転移群と非転移群の間には発現量に関して有意な相違を認めた。相関性は新規症例30例を用いた定量的解析においても確認された。C7059は分子量約110kDの蛋白であり、機能的モチーフとしSH2、SH3及びPHドメインを有し、さらにC末にはロイシンジッパードメインが確認され、シグナル伝達に関与している可能性が示唆された。培養肉腫細胞での発現を確認し、陽性細胞に対して特異的siRNAによる発現阻害を行ったところ、マトリゲルアッセイにおいて運動・浸潤能を抑制した。既に樹立してある不死化間葉系幹細胞にレンチウィルスを用いて得られた安定発現細胞株は足場非依存性増殖を獲得し、運動能・浸潤能も亢進した。細胞内局在は細胞質が主体であり、アクチンと共在していた。更に葉状偽足においてSrc蛋白とも共在していることが明らかになり、免疫共沈法により結合が確認された。以上の研究より、C7059は肉腫細胞の運動及び浸潤能に関連しており、転移との関係により単離された遺伝子として矛盾しない機能をもつことが判明した。C7059の発現解析により転移発生を予見できる可能性、更にsiRNAあるいはSrcとの結合を阻害する低分子化合物により、転移を抑制する治療法の開発に結びつくものと考えられる。
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