平成21年度は下記の成果を得た 1. 転移関連遺伝子として同定したC7059遺伝子に関して 肉腫に関する論文を投稿するとともに肉腫以外の腫瘍に関する解析を行った。 1) 大腸癌に関して:大腸癌の約30%において、癌部においてC7059遺伝子の発現を認めたが、非癌部は全く陰性であり、癌化に伴い発現が亢進していることが判明した。予後との相関では、進行群で陽性頻度が高い傾向にあった。陽性細胞株にshRNAを導入し発現を抑制したところ、肉腫同様に浸潤能が低下し、in vivoでの造腫瘍性が低下した。 2) 前立腺癌に関して:約30%の症例が陽性であり、やはり病態の進行に伴い陽性例が増加していた。陽性細胞株にmiRNAを導入した発現を抑制したところ、in vitroで浸潤能が低下し、in vivoでは腹腔内転移巣が減少した。 以上の肉腫以外の癌腫におけるデータは、C7059蛋白が腫瘍細胞の悪性度に関連したものであることを強く裏付けるものと考える。 2. 骨肉腫に対する分子標的治療法の開発としての肉腫幹細胞の同定 5種類の骨肉腫細胞株をNOD/SCIDマウスに移植し、形成された腫瘍より、再びin vitroでの細胞株(NSTと称す)を樹立し、再度マウスへの移植実験を行った。その結果、5種類全てのNST株で初回接種時より、早期に腫瘍が形成され、造腫瘍が亢進していることが判明した。そこで、これら5種類のNSTと親株の間で、発現プロファイルを比較し、共通して変化した遺伝子群を同定した。複数のシグナル関連遺伝子が同定されたが、興味深いものとして、BMP受容体の発現が亢進し、同時に下流遺伝子の発現が誘導されていることが判明した。これはこれまで臨床サンプルの結果から提唱されていたBMPシグナルと骨肉腫の悪性度の関係を分子レベルで裏付ける端緒となるものと考えられる。
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