1.白血病の分子診断 ウイルムス腫瘍遺伝子WT1由来のWT1mRNAを定量することにより、白血病患者に残存する白血病細胞量を定量する方法を我々は世界に先がけて開発した。WT1mRNAを定量することにより、正常な末梢血10万の個中に1個の白血病細胞が存在すれば検出できる。よって、本定量検査は、白血病治療での必須の検査となってきた。そして、このWTlmRNA定量キットが製品化され、昨年11月1日、保険採用された。 2.白血病の分子標的治療 (1)WT1ペプチドを用いた免疫療法 WT1タンパクは、大部分のAMLやALLに発現するがん抗原である。そこで、WT1ペプチドを用いたがんの免疫療法の第I相臨床研究を2001年に開始した。AML12人にWT1ワクチンを投与し、臨床効果評価病変をもった8人のうち4人には、臨床効果があったので継続投与され、4人のうち3人は、現在まで5年〜4年10ヶ月にわたり、完治寛解が持続しており、WT1ワクチンが有効であると考えられる。これらの3人の患者では、WT1ワクチンの投与部位の発赤、腫脹以外副作用は見られていない。 (2)WT1特異的siRNAを用いた白血病に対する分子標的療法 WT1遺伝子の発現を特異的に抑制するWT1s1RNを作製することに成功した。このWT1siRNAは、白血病細胞にアポトーシスを誘導して、死滅させる。臨床応用が期待される。
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