研究概要 |
【目的】本研究では,大腸の微小病変であるaberrant crypt foci(ACF)を有する者を対象に,sulindac,etodorac,placeboをそれぞれ短期問投与し,ACFが消失するかどうか,また1年後のポリープの発生率を抑制するかどうかをみる多施設共同二重盲検試験を行った。【対象・方法】ACFの観察は,拡大内視鏡を用いて下部直腸領域にメチレンブルーを散布して行った。薬剤は,suhndac 150mg、etodorac 200mg、乳糖(placebo)200mgをそれぞれ外観の同じカプセルに充填し,1日2回2ヶ月間投与した。2ヶ月後にACF数を評価し,1年後にポリープの発生率を検討した。【結果】登録した189例のうち172例が2ヶ月間の内服を終了した。Sulindac群(58例)においては,2ヶ月間の治療により,ACFは著明に減少した(p<0.0001)。同様に,Etodorac群(57例)においてもACF数は有意に減少したが(p=0.018)が,減少の程度はSulindac群よりも軽度であった。Sulindac群では,placebo群に比べて1年後のポリープの発生率,数ともに低い傾向にあった。ポリープ切除の既往のあるsubgroup解析において,Sulindac群では1年後のポリープの発生率,数ともに有意に減少した。Etodoracにポリープ抑制効果は認められなかった。【結語】本試験により初めてACFを標的とした大腸癌予防の臨床試験の妥当性が示された。ACFを標的病変とすることで,わずか数ヶ月間でその予防効果を評価しうることが示唆された。SuhndacはACFのみならず1年後のポリープの発生率を抑制したが,etodoracにはポリープ抑制効果を認めなかった。
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