研究概要 |
本研究では、われわれが既に報告した「大腸におけるaberrant crypt foci(ACF)がadenoma-carcinoma sequenceのaadenomaよりもさらに初期の小病変である」という所見(New Eng J Med 339, 1277〜1284, 1998)を基に、ACFを標的として、短期間スリンダックを投与することでそれを消失させ、結果として大腸癌を予防できるという仮設を立て、実際に前年度までにこの仮設を実証して来た(New Eng J Med submitted)。さらにACFでは活性型Kras(変異型)が発現しており、それがAPIを介してGlutathion S Transferaseπ(GST-π)を誘導すること、そのGST-πがACFからadenomaへの進展をプロモートすることなどもin vitroおよびin vivo(GST-π KOマウス)で証明して来た。またスリンダックはGST-πを阻害することによりACF細胞をアポトーシスに陥らせることも明らかにした。 平成20年度の研究ではスリンダックよりもGST-パイには特異性の高い薬剤すなわち申請者が合成したO'-Hexadoが大腸癌予防薬として有効であるかどうかをラット大腸癌発癌モテルで検討した。その結果アゾキシメタン(発癌剤)投与後、5〜8週(ACFが形成される時期)に薬剤を投与したラットではACFの形成はもとより、24週後の大腸癌の発生が有意により抑制されることを知った。 また、その際ACFがアポプトーシスに陥ることも明らかとなった。このことは、将来的に同薬剤を臨床で用いることにより、特異性の高い、つまり臨床作用の少ない科学予防が可能なことを示唆している。 本結果は投稿準備中である。
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