研究課題
浸潤性膵管がん(以後膵がん)は、予後不良な悪性腫瘍であるが、その悪性度を規定すると考えられる神経(周囲)浸潤モデルを作成して、神経浸潤機構の解明と新しい診断法の開発を行った。後腹膜神経組織を皮下に移植し、同部に7種類の膵がん細胞株を移植して、神経浸潤モデル作成を行った。ヒト-神経浸潤モデルでは、7種類の膵がん細胞株のうち4種類でヒト移植神経への臨床例と同様な神経浸潤を認め、細胞株でも神経浸潤する性質が保たれていることが確認された。しかし、このモデルでは定量的な評価が困難であったため、マウス-神経浸潤モデルで定量的な評価を行った。2種類の膵がん細胞株はそれぞれ11例中6例、13例中9例にマウスの皮下神経に神経浸潤が見られた。しかし3種類の膵がん細胞株では神経浸潤は見られなかった。次に両群間の発現プロファイル解析を行い高神経浸潤株で高発現している37個の遺伝子と低発現している12個の遺伝子を特定した。そのうち腫瘍-神経の相互作用から膜蛋白と思われるInvariant Chain(CD74)について検討した。Real-Time RT-PCRでは有意差をもって高神経浸潤群でCD74は高発現していた。Western Blot法、免疫細胞染色法でも同様の結果であり、CD74は細胞質だけでなく細胞膜にも発現が見られた。膵がん切除標本での免疫組織学的解析では、標本上のリンパ球を陽性コントロールとし、10%以上のがん細胞で陽性に認められた場合にCD74陽性とした。正常の膵管上皮細胞では発現は見られなかった。高神経浸潤症例では低分化の腫瘍細胞でも高発現が見られ、また神経浸潤している腫瘍細胞も高発現していた。各臨床病理学的因子を検討すると、神経浸潤に有意差をもって相関した(P<0.008)。以上、ヒト膵がん細胞株を用いてはじめて膵がん神経浸潤モデルが作製できた。今後CD74の神経浸潤への機能的関与を明らかにしていくと共に、このモデルを用いることで、神経浸潤機構の一層の解明が進むものと期待される。
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