研究概要 |
肝多段階発がんモデルに相当する7症例の結節内結節型の症例のDNAマイクロアレイ解析を行い、早期肝細胞がんで過剰発現する遺伝子としてリストアップされたCyclase-associated protein2(CAP2)の解析を行った。定量RTPCRにてがんの進行に伴い発現の上昇を認めた。さらに特異的ポリクローナル抗体を作成し、蛋白発現解析を行った結果、肝細胞がん細胞株と肝細胞がん組織に明瞭な発現を認め、一方、非腫瘍部にはわずかな発現のみであった。肝細胞がん72例(早期型:29,結節内結節型:10,進行がん:33)、腺腫様過形成7例、および背景肝組織の免疫組織化学的検討では、非腫瘍部、腺腫様過形成ではほとんど発現は認められずがんの進行に伴い強い陽性所見を認め、CAP2は肝細胞がん多段階発がんに関連;した分子であることが明らかとなった。さらに、CAP2に対する免疫沈降にてCAP2とアクチンが相互作用すること、siRNAにて発現を抑制すると増殖が抑えられることが示された。 ヒト膵がん細胞株を用いた神経浸潤モデルを17年度に開発し、高神経浸潤群と低浸潤群の比較をDNAマイクロアレイにて行い、CD74が膵がんの神経浸潤に関わる分子であることを示した。同じ系を対象にプロテオーム解析を行い、分子Xが高神経浸潤群に高発現することを見出した。多数の臨床例を用いた解析にて、分子Xの高発現は、神経浸潤・リンパ節転移と有意に相関し、有意な予後不良因子となることを示した。現在これら分子の発現を抑える系を作成しており、その機能的関与につき解析を行っている。
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