研究課題
膵がんの進展様式のひとつである神経周囲浸潤(perineural invasion,PNI)は高率に局所再発を引き起こす予後不良因子とされるがその機序は未だ不明である。これまで本研究にてCD74ならびにsynuciein-Y(SNCG)が、PNIに関与することを示した。本年度は、PNIにおけるSNCGの役割を解明するために、tetracycline-inducible SNCG発現細胞を樹立した。SNCGを過剰発現による、細胞増殖・運動への影響を検討したが、SNCG発現による有意な変化は見られなかった。SNCGの転移・浸潤への関与は、in vivo解析によるものであることを考えると、SNCGが細胞に何らかの影響を与えるためには、細胞外マトリックスや増殖因子をはじめとする微小環境の必要性が示唆される。一方、膵癌神経周囲浸潤における分子機序のin vitroの系による解明に関しては、膵癌組織において、膵癌細胞がSchwann細胞と相互作用していると考え、高神経周囲浸潤株Capan-1、低神経周囲浸潤株AsPC-1とマウスSchwann細胞株SW10の3つの細胞株を用いた非接触培養(transwell)の系より検討を進めている。マウスSchwann細胞液性因子が膵癌細胞の運動能に与える影響をmigration assayより評価したところ、Capan-1では運動能の低下、AsPC-1では運動能の亢進が見られた。また、このときのtranswell中のCapan-1を観察したところ、SW10存在下において、高分化で接着性の増した形態を示していた。これらの結果から、膵癌神経周囲浸潤のメカニズムとして、Schwann細胞によって分泌される液性因子が、浸潤中の膵癌細胞を神経周囲に留まりやすくし、さらに、その場で分化させる方向へ導いている可能性が示唆された。
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