研究概要 |
活性酸素とヒト発癌の関係を明らかにするために、酸化ストレスマーカーであるヒト尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OH-dG)を測定した。どのような環境因子、ライフスタイルが酸化的DNA損傷を上昇あるいは低下させるのかについて手掛かりを得るために労働者448人の生活習慣、労働条件、ストレス、疾患等と尿中8-OH-dGの関係を調べた。8-OH-dGの分析は電気化学検出器を接続した高速液体クロマトグラフィー(HPLC-ECD)により行った。血清コルチゾールはRIA法で測定した。その結果、喫煙、飲酒、労働時間、ストレスマーカーである血清コルチゾールと有意な正の相関を、またBMI、大豆製品、米、淡色野菜の摂取と負の相関を認めた。疾患では糖尿病、慢性肝炎等で8-OH-dG値が高かった。 デンマークにおいて1993-1997年に登録された年齢50-64才の25,717人の男性と27,972人の女性の集団に関して尿中8-OH-dGと肺癌に関するコホート研究を行った。追跡調査により1994-2001年の間に265名が肺癌と診断された。これらの肺癌患者および年齢、性、喫煙期間をマッチさせた対照群263名について、登録時に採取された尿に含まれる8-OH-dGをHPLC-ECD法により測定した。喫煙者では8-OH-dGと肺癌発生の関係は見られなかったが、非喫煙者(n=16)では8-OH-dG2倍当り肺癌の相対危険度は11.8(p=0.03)であった。この結果から非喫煙者における酸化ストレスによる肺癌発生のメカニズムが示唆された。
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