研究課題/領域番号 |
17015045
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研究機関 | (財)癌研究会 |
研究代表者 |
平井 康夫 (財)癌研究会, 癌研究所・細胞生物部, 研究員 (00260076)
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研究分担者 |
阪埜 浩司 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70265875)
宇田川 康博 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (80118918)
鈴木 光明 自治医科大学, 医学部, 教授 (50110870)
菅野 康吉 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (00171124)
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キーワード | 子宮内膜癌 / アムステルダムクライテリア / HNPCC / 家族性子宮内膜癌 / MSI / MMR遺伝子 / hMSH2遺伝子 / hMLH1遺伝子 |
研究概要 |
子宮内膜癌患者1963例に対する継続的かつ詳細な家系調査の結果、28例(約1.4%)のHNPCCの新アムステルダムクライテリアを満たす家族性子宮内膜癌症例(家系)を発見した。この結果より本邦における新アムステルダムクライテリアを満たす家族性子宮内膜癌は全子宮内膜癌の約1.4%程度に存在する。家族性子宮内膜癌の発癌にはHNPCCの原因遺伝子であるMMR遺伝子の異常の関与が示唆されている。HNPCCにおいてはhMLH1、hMSH2、hMSH6遺伝子の生殖細胞変異が重要と推測した。現在まで119例の子宮内膜癌症例のMSI解析を実施し、36例(30%)にMSI陽性を検出した。この頻度は他臓器癌のMSI陽性率に比し、極めて高率であり子宮内膜癌の発癌機構にMSIが深く関与していることが示唆された。MSIを認めた26例中16例(約61%)にhMLH1の発現低下が免疫組織学的に高頻度に観察され、煩雑なMSI解析を簡便な免疫組織化学的手法で代用できる可能性とともにMSIとhMLH1蛋白の発現低下との密接な関連性が明らかとなった。MMR遺伝子であるhMLH1およびhMSH2遺伝子の生殖細胞変異を解析した結果、14例中2例でhMSH2遺伝子の、1例でhMLH1遺伝子の生殖細胞変異を認めた。健常日本人の大規模なデータがないためhMSH2遺伝子のミスセンス変異は遺伝子多型の可能性も否定できないが、hMLH1遺伝子のナンセンス変異は確実な機能的遺伝子変異といえた。この結果、MSI陽性子宮内膜癌の約6%にMMR遺伝子の生殖細胞変異が示され、家族性子宮内膜癌のスクリーニング法として、MSI解析が新アムステルダム基準よりは有用性が高いことが示された。またHNPCCの臨床的診断基準である新アムステルダム基準では家族性子宮内膜癌の一部しか発見できていない事実を明らかにした。
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