研究概要 |
小児固形腫瘍の個別化診断法を確立することを目的として、平成17年度は神経芽腫と肝芽腫を対象に以下の成果を得た。(1)神経芽腫:我々が独自に開発した神経芽腫の予後予測用実用化DNAミニチップ(上位ランク200個の遺伝子を搭載したチップ)は、作製したclassifierを用いて行った新たな50例の追加症例による第2相validationを終わり、すべての技術を(株)SRLに移管して、カスタム化による第3相validationを開始した。これまでに約50例の新規症例の解析が終わり、良好な結果を得ている。一方、リスクの層別化をゲノムレベルで行うために、以前にカリフォルニア大学がんセンターと共同で行ったゲノムアレイ(アレイCGH)270例のデータを解析し、ゲノム構造異常による神経芽腫の新しいリスク分類を作製した。今後、実用化ゲノムアレイの作製を試みる。また、神経芽腫患児の血液中に分泌される蛋白質による予後予測法の開発として、これまでに我々が報告してきたpleiotrophin, midkine, BDNFの他に、新たに血中neurexophilinのレベルが予後と相関することを見いだした。(2)肝芽腫:肝芽腫60例の凍結組織からDNAとRNAを抽出し、前者についてはBACアレイを用いたアレイCGH、後者に関してはin-house cDNA microarrayを用いて、肝芽腫のゲノム異常および発現プロファイルを策定した。その結果、肝芽腫には大きく2つのゲノム異常パターンがあり予後と相関していること、予後の悪いゲノム異常の群は、さらに発現プロファイルにより層別化されることを明らかにした。今後、これらの結果を基に、実用化チップの開発を試みる。
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