研究課題/領域番号 |
17015048
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 善則 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30182108)
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研究分担者 |
増田 万里 東京大学, 国立がんセンター研究所・腫瘍ゲノム解析・報研究部, 研究員 (70435717)
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キーワード | アレル特異的発現 / RDP / がん抑制遺伝子 / 遺伝子欠損マウス / 肺腺癌 / 肺腺腫 / ATL / 浸潤 |
研究概要 |
癌の予防、診断に重要な分子診断法の確立、並びに標的分子の同定を目的とし、細胞接着分子CADM1/TSLC1の癌の発生、進展における意義について検討した。 まず、平成19年度までに我々が開発したアレル当りの相対的遺伝子発現の高感度解析法であるRNA Difference Plot (RDP)法を用いて、様々な癌関連遺伝子のアレル当りの発現量の多様性の実態を検討し、癌を含む様々な病態で関連遺伝子のアレル発現の不均衡が認められることを見出した。また、CADM1のアレル特異的発現に一定の差を示す多型を見出した。 一方、我々が同定した癌抑制蛋白質であるCADM1のヒト腫瘍における意義の検討を続け、非小細胞肺癌や腎癌のみならず、神経芽細胞腫や子宮頸癌においても、その進展にCADM1の不活化が関わり、予後と相関することを共同研究で報告した。また、Cadml遺伝子ホモ欠損マウスにおいて、精子形成障害による不妊に加え、15月齢以後、肺腺腫、肺腺癌が高頻度に発生することを見出した。一方、遺伝子欠損マウスの背景となるC57BL6マウスは一般に肺腫瘍発生に抵抗性であることから、CADM1が強力な癌抑制遺伝子であることが示された。今後この系を用いて、肺癌の発生、進展の分子機構の解明や治療、予防の研究を発展させる予定である。 一方、CADM1が成人T細胞白血病(ATL)では過剰発現するという以前に共同研究で報告した知見に基づきATLにおけるCADM1の意義を検討し、CADM1がATL細胞の葉状仮足の形成を誘導すること、一方CADM1の発現をsiRNAで抑制すると、ATL細胞の葉状仮足形成と、初代培養由来線維芽細胞への接着が強く抑制されることを見出した。このことから、CADM1はATLでは浸潤を促進する可能性が示された。
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