研究概要 |
ブラジルに居住する日系人を対象に、がんの発生要因を解明し、日本人にとって効果的な予防法を開発するために、症例対照研究や断面研究などの手法を用いた疫学研究を行っている。 乳がんの症例対照研究のデータ解析として、今年度は対照群の閉経後女性(55歳以上)を対象に、血中ホルモン濃度(estradiol, bioavailable estradiol, estrone, sex-hormone binding globulin, androstenedione, dehydroepiandrosterone sulfate, testosterone, free testosterone)を分析、日系人(44人)、非日系人(134人)、日本人(185人)の3つの集団間で比較した。その結果、日本人に比べて日系人および非日系人は、estradiol, bioavailable estradiol, estrone, testosterone, free testosteroneのレベルが有意に高かった。また日系人はsex-hormone binding globulinのレベルが日本人よりも有意に低かった。日系人のホルモンレベルが日本人より高いという傾向は、日系人の乳がん罹患率・死亡率が高いことに一致する知見である。 サンパウロ州在住日系人を対象に大腸腺腫保有に関連する要因を明らかにすることを目的とした大腸腺腫の断面研究は、2つの医療機関で対象者のリクルートを行っており、平成22年3月末の時点で719人の調査が終了している。また食物摂取頻度調査の妥当性を検討するために、平成20年8月から平成21年9月にかけて大腸腺腫の断面研究に参加した110人に調査協力を依頼し、100人に対して4日間の食事記録調査を行い、調査を完了した。
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