研究概要 |
悪性リンパ腫の分子病態を分子生物学的,細胞遺伝学的に解明し,臨床応用を図ることを目的とし,主としてB細胞性リンパ腫について研究を進めた。 MALTリンパ腫の病因と病態に関する研究について,我々は,胃MALTリンパ腫では,API2-MALT1キメラ遺伝子が存在するとピロリ菌除菌療法が有効でないことを明らかにした。また,除菌療法抵抗性の約半数にはキメラ遺伝子が存在しないが,ゲノムコピー数の異常が多いことも明らかにした。今後は,除菌療法反応群とともに不応群の症例数を増やし,よいマーカーを見出す必要が示された。 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL),マントル細胞リンパ腫(MCL)の病因と病態に関する研究では,我々は,これまでに,独自に確立したアレイCGH法を用いて,DLBCLについてゲノム異常を解析し,病態,病型に相関する特徴的な染色体異常領域を報告した。また,発現解析によるサブタイプ分類に特徴的なゲノム異常を明らかにした。また,MCLについても,特徴的なゲノム異常が存在することを明らかにし,2q13欠失領域の責任遺伝子がアポトーシス促進遺伝子BIMであることを見出していた。BIM遺伝子はBCL2の制御遺伝子であり,その欠失はBCL2の機能亢進が引き起こされ,腫瘍化に結びつくと考えられた。これらのアポトーシス関連遺伝子の発現解析とクラスター解析によりMALTリンパ腫を解析すると,予後不良群が抽出される可能性が示唆されているので,今後の重要な研究課題である。
|