マントル細胞リンパ腫(MCL)の病因と病態に関する研究において、これまでに2q13欠失領域の責任遺伝子がBIMであることを証明したので、BIM遺伝子の関連する機能であるアポトーシス関連遺伝子群について発現解析データを解析し、NOXAとBCL2が強く発現している群が特に予後不良であることを見いだし、我々が解析途中であるMCL検体15症例及び細胞株について検討したところ、実際の患者検体では症例数が少なかったものの、細胞株の半数(8細胞株中4細胞株)に同じ表現系を持つものを見いだした。細胞株は悪性度が高い症例から樹立されることが多いので、予後不良群のマーカーとして有効である可能性が示唆された。今後、症例数を30症例程度増やして確認することが必要である。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)について100症例近く、MCLは30症例についてアレイCGHによるゲノム異常を調べてきた。アレイCGHによる解析の結果、各病型には特徴的なゲノム異常様式が認められることを報告してきた。そのデータを用いて、Bio-Informaticsの手法を用いて、病型判別診断に有用なアルゴリズムを確立することができるかを検討したところ、MCLとDLBCLを判別する正答率は94%、DLBCLのうちのサブタイプである ABC型とGCB型についての判別正答率は84%と精度が高く診断することが可能であった。これらを判別するためのBioinformaticsにより選択された判別マーカーは50-80個程度であり、これらは病態や病型の形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。今後の重要な研究課題である。
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