研究課題
セレクチンとその糖鎖リガンドを介した細胞接着は、悪性細胞の血管内皮への接着を媒介して癌の血行性転移を引き起こす。白血病では、白血病細胞が血管外組織を浸潤する際にセレクチンと糖鎖リガンドを介する細胞接着が重要な役割を演じる。白血球系細胞ではシアリルルイスx糖鎖がセレクチンのリガンドとなっており、シアリルルイスxの発現はフコース転移酵素VII(FUT7)によって調節される。今年度我々はFUT7遺伝子の白血球系細胞における転写調節機構を、リポーターアッセイおよび染色体免疫沈殿法(ChIP法)により解析した。その結果、FUT7の5'-調節領域には、好中球・単球での恒常的発現を導く転写因子MZF-1の結合部位や、非活性化状態のリンパ球で転写を抑制するGATA-3、活性化に伴って転写を誘導する転写因子CREB/ATFやSp1の結合部位が存在しており、これらによりセレクチンの糖鎖リガンドの発現が調節されることが判明した。成人T細胞白血病の白血病細胞は糖鎖リガンドを高発現し強い組織浸潤を起こすが、その背後にはHTLV-1ウイルスがコードするTax蛋白質がCREB/ATF結合部位を介してFUT7の転写を強く誘導するという機構がある。活性化に伴いTh2細胞に比してTh1細胞がセレクチンへ強く結合するのは、Th1細胞への分化で主導的役割を演じる転写因子T-betがFUT7の5'-調節領域に存在し、これがGATA-3を阻害しつつ転写を誘導し、シアリルルイスxが強く発現するためであることが判明した。T-betとGATA-3とは結合し、互いに相手のDNA結合を阻止する。またT-betはSp1、CBP/P300と結合して転写因子複合体を形成し、GATA-3はHDAC-3および-5と結合することが判明した。またFUT7の5'-調節領域には低酸素状態で活躍する転写因子HIF-1が結合して転写を促進することも判明した。
すべて 2006
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