研究概要 |
CD22分子はリンパ性白血病や悪性リンパ腫などB細胞起源の悪性細胞に発現し,治療のターゲット候補と考えられ,既にヒト化抗体EpratuzumabやInotuzumabが開発されている。CD22をターゲットとした治療は,CD22が単なる悪性細胞の表面マーカーにとどまらず,CD22がその細胞内ドメインにITIMモチーフを持ち,これを通して細胞増殖に対して抑制的なシグナルを伝達する機能性分子であることに依存するとされている。CD22はsiglee-2の別名を持ち,リガンドは糖鎖である,正常B細胞は糖鎖リガンドを細胞表面に持ち,これがaCD22と結合して過度のB細胞増殖・活性化が抑制されていると想定されてきた。しかしこれまでB細胞上のCD22リガンドは詳細不明であった。我々は今年度,B細胞上のCD22の特異的糖鎖リガンドが,α2-6シアリル6-スルポLacNAc鎖であることを明らかにした(J.Bial.Chem.,282:32200-32207,2007)。リコンビナントCD22の正常B細胞への結合が,本糖鎖に対する特異的単クローン抗体により阻害されることから,本糖鎖が正常B細胞上の主要なCD22リガンドであることを証明した。正常人末梢血B細胞の大部分を構成するナイーブB細胞にはα2-6シアリル6-スルホLacNAc糖鎖が強発現しており,これがCD22と結合して過度のB細胞増殖・活性化が抑制きれていると考えられた。末梢血B細胞中の少数のメモリーB細胞では本糖鎖の発現がやや減弱している。予備実験の結果,培養悪性B細胞株ではα2-6シアリル6-スルホLacNAc糖鎖の発現が弱いごとが判明した。糖鎖リガンドの発現減少にょるCD22を介した抑制的シグナルの減弱が悪性B細胞の高い増殖能の原因となっている症例においては,抗CD22抗体を用いた治療が特に有効であろうと予測される。
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