ECyd(現在、米国および香港で固形がんに対する第2相臨床試験中)は、Urd-Cyd kinase-2および2種類のnucleotide kinasesで5'-三リン酸体(ECTP)に代謝され、RNAポリメラーゼをCTPに対して競合的に阻害する。従って、新規な蛋白質の生合成が阻害されることになる。特に、短寿命な細胞増殖や細胞周期などに関与する蛋白質の生合成がストップすることががん細胞の増殖に大いに関係する。シスプラチンはDNA中のGpGやApG配列に架橋しDNAをbentさせるが、これにbentしたDNAを認識する蛋白が結合し修復を阻害する。この現象によりG2期アレストが起こる。この時、ECydを併用するとsurvivinなどの抗アポトーシス蛋白の生合成が止まるために、DNAに損傷があるにもかかわらず細胞周期が進行し、G2期アレストが解除され、ECydを併用しない場合に比較してG1期でアポトーシスが数倍増強されることを見出した。一方、A549細胞をECyd処理するとChk1タンパク質のみならずChk1およびChk2のリン酸化が阻害された。さらに、チェックポイント関連タンパク質の発現阻害を基本に、シスプラチンが誘導するS期およびG2M期チェックポイントの抑制とアポトーシスを引き起こした。In vivoでは、ECyd自体が抗腫瘍性を示すが、シスプラチンとの併用でOCC-1やLX-1の増殖阻害のみならずかなりの延命効果も示した。従って、これらの現象は、現在行われているECydとシスプラチンの併用による臨床試験の合理性を示すものである。
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