研究課題
生理活性リゾ脂質とその受容休は生体に広く分布し細胞運動、接着、増殖、生存、アポトーシスなど細胞の基本的な生命活動を制御している。本研究は、リゾ脂質性シグナル分子による運動制御機構を調べ、その受容体機能を制御することによってがん治療の可能性を探ることを目的とする。(1)今後のリゾホスファチジン酸産生機構を調べるツールとなるLPA産生酵素オートタキシンの抗体を作成した。このオートタキシン抗体を用い、オートタキシンが脳脊髄液中に大量に存在すること、髄膜細胞から産生されることを明らかにした。このように、中枢神経系のLPA産生機構の一端が明らかにされた。今後、癌細胞からのLPA産生機構の解析に威力を発揮すると思われる。(2)グリオーマを用い、インビトロ遊走活性、浸潤活性に対するLPAアンタゴニストKi16425、さらにLPA受容体に特異的なsiRNAなど受容体を標的とした抗がん作用の有効性を検討した。初代培養アストロサイトではLPA受容体の発現が低く、LPAによって細胞遊走活性もほとんど観察されない。しかし、ラットC6グリオーマ、ヒトグリオーマ(GNS-3314、CGNH-89)、ヒトグリオブラストーマ患者の検体ではLPA1受容体の発現増強が観察され、LPAで著明な遊走活性が観察された。この細胞遊走、細胞浸潤活性はLPA受容体アンタゴニストKi16425、でほぼ完全に抑制された。また、細胞遊走はLPA1受容体に特異的なsiRNAで著明に抑制され、これらのグリオーマの細胞運動の亢進は発現増加したLPA1受容体を介していることが推定された。このLPA1受容体を介した細胞遊走、浸潤の細胞内シグナル伝達機構、特に、低分子G蛋白、MAPキナーゼに関して特異的な阻害剤、ドミナントネガティブなシグナル分子の発現実験などにより解析した。その結果、細胞運動の亢進はRac1/JNK系とCdc42/p38MAPK系の両経路が関わっていることが推定された。グリオーマは浸潤性の高いがん細胞であり、Ki16425、受容体特異的siRNAはグリオーマの細胞運動の制御に有効であることが示唆された。今後、インビボ実験でその有効性を実証する必要がある。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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