研究課題/領域番号 |
17016011
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮園 浩平 東京大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90209908)
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研究分担者 |
渡部 徹郎 東京大学, 大学院医学系研究科, 助手 (00334235)
齊藤 正夫 東京大学, 大学院医学系研究科, 助手 (90345041)
前田 真吾 (財)癌研究会, 癌研究所生化学部, 研究員 (60353463)
宮澤 恵二 東京大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (40209896)
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キーワード | TGF-β / 分子標的治療 / シグナル伝達 / 胃がん / 膵臓がん / 乳がん / DDS / 転移 |
研究概要 |
1.TGF-β阻害剤はがん新生血管に主に作用して血流量は減少させずにその漏出性を高める作用を有する。我々は低用量のTGF-β阻害剤を併用投与することで、アドリアマイシンを内包するブロック共重合体ミセル(ミセルアドリアマイシン)やDoxilのがん組織への分布を劇的に改善し、動物モデルにおいてBxPC3やMiaPaCa-2,panc-1.などの膵臓腺がんやスキルス胃がんOCUM-2MLNの頭著な増殖抑制に成功した。TGF-β阻害剤は正常の組織へのナノ粒子の蓄積を促進しないが、腫瘍組織における血管外移行が増加したことが効果発現のメカニズムと考えられた。 2.乳がんでTGF-βによって強く誘導される遺伝子としてDNA microarrayによりDEC1を同定した。DEC1を高発現している乳がん細胞ではTGF-βによって細胞の生存が促進され、TGF-β阻害剤でアポトーシスが促進されるという興味深い結果を得た。DEC1の優性変異体を乳がん細胞JygMC(A)に発現させるとヌードマウスにおける乳がんの肝臓や肺への転移を顕著に抑制できることが明らがとなりTGF-βの新たな標的として注目された。 3.TGF-βシグナルを増強させるユビキチンリガーゼとして我々はこれまでにArkadiaを同定した。ArkadiaはSmad7を分解してTGF-βの作用を増強することを我々はすでに明らかにしていたが、今回の研究で我々は癌遺伝子SkiやSnoNもArkadiaによって分解されることを明らかにした。 4.リンパ管新生には転写因子Prox1が重要な役割を果たす。我々はProx1の発現がTGF-β阻害剤処理で亢進すること、in vivoでVEGF-Cの共存下ではTGF-β阻害剤がリンパ管新生を促進することを明らかにした。しかしはTGF-β阻害剤でがんの転移を示す証拠はなく、今後の検討が必要と考えられた。
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