研究課題
本研究は、エピジェネティカルな遺伝子発現の制御の乱れやRNA干渉系の異常により生ずるヒト癌の征圧をめざして、この異常が生じる分子機構の解明を進めると共に、その成果に基づいた次世代型の遺伝子治療用のレトロウイルスベクターを開発することを目的としている。まず「脊椎動物で保存された制御系にかかわると考えられるmiRNA遺伝子のプロモータ領域の予測アルゴリズムの開発を完了し、その有用性を生化学的に進めた。そして、miR-21以外にmiR-146a, miR-126, miR-199a, miR1-2/133a,及びmiR-10b,のプロモーター領域が正しく予測されたことが実証された。miR-21のプロモーターには、AP-1, PU.1, NF1-B, C/EBPαとの結合領域が同定され、このうちAP-1とPU.1が、前骨髄性白血病からマクロファージ様細胞へと分化する際にこのmiRNAの発現誘導を担っていることが証明された。またmiR-21が癌細胞で高レベル発現するのは、癌で内在性のAP-1が一般に高いことを反映していると考えられる。さらにmiR-21がNFI-B mRNAを標的することを予測しこれを実証した。miR-21の発現が高まると、miR-21は内在性のNFI-B mRNAの3'UTR領域に結合して翻訳を阻害して細胞内のNFI-Bタンパク質の量を低下させる。NFI-Bタンパク質は、通常miR-21のプロモーター上に結合していて、miR-21の発現を強く抑制していることから、このタンパク質の量の低下は、miR-21の発現自身をより安定化させることになる。従ってmiR-21の発現はひとたび発現するとこれはdouble negative feedback制御により、いよいよ安定化することになる。このモデルは開発したmiR-21発現レトロウイルスの導入実験により実証された。また各miRNAに対する相補的拡散をプローブとして、高感度でかつ特異性の高いmiRNA検出系をin situ hybridigation法を使って確立した。また組織片(パラフィン切片)をimmunohistochemicalに染色する方法により、ヒト大腸癌で、周辺正常域より高いmiR-21の発現の検出に成功している。
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