研究課題
本研究は、エピジェネティカルな遺伝子発現の制御の乱れやRNA干渉系の異常により生ずるヒト癌の征圧をめざして、この異常が生じる分子機構の解明を進めると共に、その成果に基づいた次世代型の遺伝子治療用のレトロウイルスベクターを開発することを目的としている。まず、ヒトの代表的なクロマチン構造変換因子であるSWI/SNF複合体にsubstoichiometricalに結合する因子としてhREQタンパク質をプロテオミクス解析により同定し、これがNFKBファミリー内のRelB/p52とSWI/SNF複合体の特異的なリンカーとして機能することを明らかにした。そしてhREQ遺伝子に対するshor thairpin RNAを高発現するレトロウイルスベクターを導入してhREQタンパク質の発現量を抑制すると、RelBの恒常的亢進が見られる細胞株での非足場依存性増殖を効率良く抑制することが示された。次に、ほとんどのヒト癌でその発現が亢進することが知られるmiR-21遺伝子のプロモーター領域の研究を行ない、このプロモーター内に、AP-1とNFIの結合部位があることを見い出した。これはmiR-21が癌細胞で高レベル発現するのは、一般に癌細胞中で内在性のAP-1活性が高いことを反映していることを示している。またmiR-21の標的の1つとして転写抑制因子NFIBを同定した。従ってmiR-21の発現はNFIBによりdouble negative feedbackの機構により制御されて、miR-21の発現はひとたび発現すると、その発現がいよいよ安定化することになることが示唆される。このことは、実際に開発したmiR-21発現レンチウイルスベクターの導入によって、内在性のmiR-21が上昇することからも証明された。さらに、特定のmiRNAの活性を長期間効率良く阻害するDecoy RNAを設計し、それをレンチウイルスベクターにより高発現させる方法も樹立した。その結果、いくつかの癌細胞株にこれを導入してmiR-21の活性を抑制することにより、極めて高い効率でアポトーシスを誘導してこれらの癌細胞株の増殖を抑制させることに成功した。
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