研究課題
最近になってコーディング遺伝子の発現制御の乱れや各種のmicroRNAの発現異常がエピジェネティカルに生じている根拠が多くのヒト癌で示されるようになった。本研究では、このようなエピジェネティカルな異常が生じる分子機構の解明を進め、その成果を集約してこれらの癌を征圧する次世代型の遺伝子治療用レトロウイルスベクターを開発することを目的としている。我々は、SWI/SNFクロマチン構造変換因子の触媒サブユニットであるBrmとNFkappaBのサブユニットRelB/p52との両者に直接結合し、このNFkappaB分子による転写活性を特異的に活性化するアダプター分子としてRequiemタンパク質(REQ)を同定した。恒常的なRelB/p52の活性化による癌化が見られる癌細胞株Panc-1,H1299に、REQに対するshRNAベクターを導入しknockdownを行ない、発癌活性を抑制するかを検証した。その結果、shRNAを搭載したウイルスベクターを導入したこれらの細胞は、平板培養での増殖速度に影響を全く与えなかったが、軟寒天中でのコロニー形成率を5%以下にまで下げることに成功した。この結果は、REQが重要な治療標的となりうることを明確に示すと供に、Panc-1,H1299細胞では、通常の増殖に必要なRelB/p52の量は、足場非依存的な増殖に必要とされるRelB/p52量よりかなり低いことも示唆された。次にBrmのpost-transcriptional suppressionの機構として、BrmmRNAを標的とするmiRNAが特定の宿主細胞内に内在的に存在してBrmの初期転写産物を不安定化しているという作業仮説を立て実験を行なった。実際にmiR-199aの発現レトロウイルスベクター、または新規に開発したmiR-199aの活性を特異的に阻害するデコイRNA(TuD-niR199a)発現ユニットを搭蔵したレンチウイルスベクターを利用してmiR-199aが、Brmの標的となっていることを証明し、さらに多くのがん細胞型において、BrmとmiR-199aがdouble-negative feedback制御を形成していることを実証した。
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