アポトーシスを阻害するIAPファミリータンパク質のなかで、apollonは分子量530Kの巨大なタンパク質である。apollonはCaspase9、SMAC、HtrA2などのアポトーシス誘導因子と結合し、ユビキチン・プロテアソームシステムにより分解することによりアポトーシスを阻害する。今年度の研究では、細胞がアポトーシスを起こすとapollonが分解されて減少すること、このapollonの分解にはセリンプロテアーゼ活性をもつHtrA2が重要であることを見出した。すなわちapollonとHtrA2はお互いのタンパク質を分解することによりアポトーシスを制御する事が明らかになった。apollonによるHtrA2の分解にはHtrA2のIAP結合モチーフを介したapollonとの結合が必要であり、apollonのUBCドメインによりHtrA2タンパク質がユビキチン化され、プロテアソームにより分解される。一方HtrA2によるapollonの分解にはHtrA2のIAP結合モチーフは必要ではなく、HtrA2のセリンプロテアーゼ活性ドメインが基質タンパク質としてapollonを認識していると考えられた。HtrA2を野生型マウス胎児繊維芽細胞(MEF)に発現するとアポトーシスを引き起こしたが、プロテアーゼ活性を持たない変異体HtrA2は野生型MEFにアポトーシスを誘導しなかった。しかしapollon欠失MEFではプロテアーゼ活性を持たない変異体HtrA2でもアポトーシスを誘導した。apollon欠失MEFで、HtrA2の各種変異体によるアポトーシス誘導活性を調べた結果、IAP結合モチーフを持つHtrA2はアポトーシスを誘導することが明らかになった。これらの結果から、アポトーシスの過程でミトコンドリアから細胞質に遊離したHtrA2は、apollonを分解し、プロテアーゼ活性とIAP結合モチーフにより細胞死を誘導する可能性が考えられた。
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