急性骨髄性白血病におけるFLT3変異は、AMLの約30%に認められる活性化変異である。我々は小分子化合物ライブリーの中から、FLT3に高い特異性を有する新規構造物FI-700を発見した。nMレベルでの阻害活性と下流シグナルの抑制、細胞周期ではG1停止を引き起こした。免疫不全マウス(NOGマウス)での継代が可能なFLT3変異を有するヒト白血病細胞を用いて、FLT3キナーゼ阻害剤による治療を行ったところ、本キナーゼ阻害剤は、正常造血への阻害作用が少なく、白血病細胞が駆逐されるのとほぼ同期して正常造血が回復する可能性が示唆された。一方、化学療法剤であるシタラビンを投与した場合には正常の造血細胞が破壊された中に、骨芽細胞あるいは血管内皮細胞に接着して白血病細胞が残存していた。 ヒト白血病細胞株と一部の症例について市販のリン酸化受容体型チロシンキナーゼ(RTK)アレイを用いて、キナーゼプロファイルについての解析を行なった。その結果、FLT3の活性化を認める細胞株を4種類確認した。この中でFLT3のみにリン酸化を示した細胞はFLT3阻害剤に高感受性を示したが、他のRTKの活性化も併存した細胞株は、FLT3阻害剤に対する感受性は低下し下流のSTAT5も抑制されなかった。この細胞株に対しては、併存するリン酸化RTKに対する阻害剤が併用効果を示した。活性化RTKアレイで陽性となったRTKはキナーゼ阻害剤による治療の標的となり、個々のRTK阻害剤の併用が有効である可能性が示唆された。
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