急性骨髄性白血病におけるFLT3変異は、AMLの約30%に認められる活性化変異である。我々は小分子化合物ライブリーの中から、FLT3に高い特異性を有する新規構造物FI-700(昨年度報告)に加えて、KW-2449を発見した。この化合物はvitroではFLT3の他、Aurora、ABLキナーゼを阻害した。nMレベルでの阻害活性と下流シグナルの抑制、細胞周期ではG1停止を引き起こした。免疫不全マウス(NOGマウス)での継代が可能なFLT3変異を有するヒト白血病細胞を用いて、FLT3キナーゼ阻害剤による治療を行ったところ、本キナーゼ阻害剤は、正常造血への阻害作用が少なく、白血病細胞が駆逐されるのとほぼ同期して正常造血が回復する可能性が示唆された。マウスへのFLT3変異腫瘍移植モデルでの有効性を確認した。ヒト白血病細胞に対してもFLT3の阻害、STAT5のリン酸化阻害、アポトーシスの誘導を起こした。FLT3を抑制する10倍の濃度ではAuroraBおよび数倍の濃度でT315Iを含むABLキナーゼも阻害した。一方、キナーゼ阻害剤での有効性を検証するために、NOGマウスへのヒト白血病モデルを作成し、キナーゼ阻害剤での残存・耐性メカニズムについても検討した。 この結果、コントロール群あるいはイマチニブ投与群では、マウス末梢血中のBCR/ABL mRNAコピー数が2〜5倍増加するのに比べ、KW-2449投与群では逆に1/2-1/3に減少し、骨髄中のヒト白血病比率も減少した。このことはKW-2449がヒト耐性細胞に対しても生体内で有効であることを示唆する。
|