急性骨髄性白血病におけるKIT変異は、FLT3変異に次いで多く認められ、特にt(8;21)やinv(16)を有する、いわゆるCBF白血病では高率に認められる活性化変異である。我々は小分子化合物ライブリーの中から、受容体型チロシンキナーゼに選択性の高いリード化合物からのスクリーニングによって、FLT3に高い特異性を有するFI-700をすでに報告している(clin Cancer Res 2007)。今回、FI-700の元となったリード化合物をあらたに構造展開することによって、KIT選択性の高いKI-328を得た。この化合物はvitroではKIT活性を低濃度で抑制し、FGFR1、PDGFR、RAFも弱く抑制するが、FLT3を含むそのほかのキナーゼ抑制効果を認めなかった。KI-328はKITの野生型、T417F、V540L、N822Kを導入した細胞株に対し、1μM未満の濃度で細胞増殖抑制、KITリン酸化の阻害と下流シグナルMAPK、STAT3、AKTリン酸化の抑制、細胞周期G1停止を引き起こし、アポトーシスを誘導した。一方、白血病で最も変位頻度の高いD816Vに関しては、GI50あるいはIC50が数μMであり、耐性を示した。KIT抑制活性を有する様々なチロシンキナーゼ阻害剤に対する野生型KITとD816V変異KITの感受性を比較したところ、イマチニブ、KI-328などのようにKITに比較的高い選択性を示す阻害剤では、D816V変異には有効ではないこと、逆にダサチニブやスニチニブのように数多くのチロシンキナーゼにヒットする化合物では、D816Vにも有効であることが示された。さらにD816Vに選択性の高い化合物をスクリーニングしたところ、HSP90阻害剤が有効であることが明らかとなり、KI-328との間で相乗効果も認められた。
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