研究課題
1) NY-ESO-1は、メラノーマ、食道癌、前立腺癌等多くの癌において発現頻度が高いがん/精巣(cancer/testis, CT)抗原のひとつであり、本抗原発現腫瘍担癌患者において、自発的に液性および細胞性免疫応答誘導が認められる極めて免疫原性の高い抗原であることが明らかにされ、有望ながん免疫療法の標的として多くの臨床試験が試みられている。BALB/cマウスにおけるNY-ESO-1に対するCD8陽性T細胞エピトープを同定し、CD8陽性T細胞およびCD4陽性T細胞の活性化の検出系を確立した。NY-ESO-1 DNAワクチンにより、ヒトにおいても多数のHLA拘束性エピトープが同定されている、NY-ESO-1_<71-90>, NY-ESO-1_<81-100>に反応するCD8陽性T細胞が誘導された。その活性は、抗D^d抗体でブロックされ、D^d拘束性であることが示唆された。さらに短縮ペプチドを作成し、最小のCTLエピトープは、NY-ESO-1分子の81アミノ酸(アルギニン)から88アミノ酸(ロイシン)の8merであることを同定した。NY-ESO-1蛋白ワクチンおよびDNAワクチンにより、NY-ESO-1に対するCD8陽性T細胞およびCD4陽性T細胞が誘導された。この際誘導されたCD8陽性T細胞は前述のNY-ESO-1_<81-88>を認識する事が確認された。2) 単一細胞レベルでサイトカインや細胞障害性顆粒の分泌等多くの機能を持つマルチファンクション性T細胞の重要性が指摘されている。マウスのT細胞移入療法のモデルを用いて、in vivoにおける腫瘍抗原特異的T細胞のマルチファンクション性の獲得につき検討を行った。腫瘍の進展に伴い、T細胞移入療法の抗腫瘍効果が減弱し、移入細胞のマルチファンクション性獲得が阻害されること、その阻害には制御性T細胞が関与することが判明した。さらに、in vivoにおける抗原ペプチド投与やGITR刺激により担癌状態でも移入細胞のマルチファンクション性を改善し抗腫瘍効果を向上させ得た。ヒトリンパ球にレトロウイルスベクターを用いて腫瘍抗原MAGE-A4特異的TCR遺伝子を導入したリンパ球を作製し、このヒトT細胞を用いた移入療法のin vivo評価系を免疫不全NOGマウスを用いて確立した。本評価系においても移入T細胞のマルチファンクション性獲得が良好な抗腫瘍免疫応答の指標となることが判明した。
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