研究課題/領域番号 |
17016032
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武藤 誠 京都大学, 医学研究科, 教授 (70281714)
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研究分担者 |
青木 正博 京都大学, 医学研究科, 講師 (60362464)
三好 弘之 京都大学, 医学研究科, 助手 (30362479)
北村 剛規 京都大学, 医学研究科, 助手 (10378622)
大島 浩子 金沢大学, がん研究所, 助手 (80362515)
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キーワード | 癌 / マイクロアレイ / 病理学 / トランスジェニックマウス / Apc / COX-2 / 間質細胞 |
研究概要 |
1.Apc^<Δ716>マウスの良性腺腫と比べると、Apc/Smad4複合変異マウスの腸管に発生する腺癌では著しい間質増生(線維芽細胞の増加と細胞外基質の蓄積)が認められる。本年度は、この間質増生に関わる因子を同定するためにApc^<Δ716>マウスの腺腫とApc/Smad4複合変異マウスの腺癌を用いてDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、間質増生を促進することが知られているサイトカイン(TGF-β、IGF-I、TNF-αなど)のmRNAの発現は腺腫と腺癌で変わらないことが分かった。一方、これらサイトカインの活性化に関わりうる蛋白分解酵素のmRNAが腺癌で増加することを見いだした。レーザーマイクロダイセクションを用いて上皮細胞画分から採取したRNAを用いてRT-PCRを行ったところ、この蛋白分解酵素のmRNAはApc/Smad4複合変異マウスの腺癌上皮細胞で発現が増加していることが分かった。 2.胃癌発生の危険因子であるHelicobacter pyloriが胃に感染するとCOX-2発現が誘導され、PGE_2産生が亢進することから、前年度までにCOX-2およびPGE_2変換酵素mPGES-1を同時に発現するトランスジェニックマウス(K19-C2mE)を作出し、胃粘膜でのPGE_2産生により著しいマクロファージ集簇が誘導され、次に細菌感染に伴ってマクロファージが活性化し、過形成性腫瘍が発生することを明らかにした。本年度は、これら良性腫瘍の胃癌への悪性化モデルを確立するため、Wnt経路を活性化するトランスジェニックマウス(K19-Wnt-1)を作出しK19-C2mEマウスと交配したところ、全例で胃に浸潤を伴う腺癌の発症を認めた。これらの結果は、マクロファージの集簇とその活性化という二段階により過形成性腫瘍(初期病変)が形成された後、上皮細胞での遺伝子変異が加わることで胃癌へと進展(悪性化)することを明確に示している。
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