まず、癌細胞の増殖・転移において重要な役割を果たすマクロファージのイメージングによる体内分布評価を目的にマンノース修飾量子ドット(ManQD)を合成した。ManQDは、未修飾QDと同程度の蛍光強度を維持し、培養マクロファージにおいてマンノースレセプターを介してマクロファージへ選択的に取り込まれた。また、ManQDによる蛍光観察は48時間まで安定に行えることを確認した。さらに、ManQDを腹膜播種モデルマウスへ投与したところ、ManQDはマクロファージへ選択的に取り込まれ、in vivoイメージングにより、腹腔内での癌細胞の増殖に伴うマクロファージの増大が観察できた。次に、癌細胞の腹膜播種治療を目的に、CpGオリゴの免疫担当細胞へのターゲティングを行った。免疫担当細胞指向型キャリア(Manリポソーム)を用いてCpGオリゴを静脈内並びに腹腔内へ投与後、血中並びに腹水水のIL12、IFN・などのサイトカイン濃度が増加し、その量は未修飾カチオン性リポソームとの複合体の場合と比較し有意に高かった。さらに癌細胞の肝転移モデルマウスまたは腹膜播種モデルマウスへCpGオリゴとManリポソームの複合体を投与したところ未修飾カチオン性リポソームとの複合体の場合と比較し、肝臓ならびに腹腔内の有意な癌細胞数の増加抑制が認められた。また、腹膜播種モデルにおいては、生存期間の延長も認められた。最後に、新規癌細胞選択的抗がん剤キャリアとして、乳癌細胞に高発現するHER2認識抗体を修飾したリジンデンドリマーを合成した。培養したHER2高発現乳癌細胞を用いた検討により抗体修飾リジンデンドリマーの選択的な取り込みを確認した。以上、本年度は、癌のモデルマウスを用いて細胞増殖のイメージングと免疫療法による治療法の確立、および新規抗がん剤キャリアの開発を行った。
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