チロシンキナーゼは、各種白血病や慢性骨髄増殖性疾患の病態に深く関与している。申請者らは、腫瘍性マスト細胞や急性骨髄性白血病の原因遺伝子である恒常的活性化変異KIT、慢性抗酸球性白血病の原因遺伝子FIP1L1/PDGFRα、あるいは、慢性骨髄単球性白血病の原因遺伝子TEL/PDGFRβを造血幹細胞や各種前駆細胞に導入しその影響を解析した。その結果、FIP1L1/PDGFRα導入造血幹細胞では、ras、p38MAPKの活性化ならびに転写因子PU.1の発現抑制やGATA2の発現亢進が認められるとともに、白血病幹細胞の維持と好酸球への分化が誘導されることが明らかとなった。これらの知見はがん幹細胞の特性の解明にも有用であると考えられる。 また、我々は、サイトカイン刺激によりその発現が誘導される新規抗アポトーシス分Anamorsin(AMを見出した。AM欠損マウスは二次造血が障害され著明な造血不全を認めたが、AMトランスジェニック(tg)マウスは脾臓におけるBリンパ球の増加を認めた。AMと造血器腫瘍の治療成績、病態や予後との関連について解析するため、まず、各種リンパ腫におけるAMの発現を解析した。瀰漫性大細胞型リンパ腫(DLBCL)では約3割の症例においてAMが高発現されていた。予後との関連では、IPIスコア(重症度)低値のものではAM高発現群は非・低発現群に比し有意に予後が悪く、特にリツキサン(CD20抗体)非使用例では、その傾向が強かった。IPIスコア(重症度)低値かつAM非・低発現群はリツキサンを使用しなくても予後良好であり、AMがリンパ腫の新たな予後、治療選択マーカーになることが明らかとなった。現在、AMの抗アポトーシス作用の分子機構を解析中である。
|