1)これまでに、海綿から単離したブロモチロシン誘導体bastadin類がヒト齊帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対して選択的に増殖抑制効果を示すことを明らかにしている。今回、Bastadin類のin vivoでの作用について検討した。Bastadin類は、マウス角膜を用いたin vivo血管新生モデルにおいて100mg/kg/day×3daysの腹腔内投与で顕著な血管新生抑制効果を示した。さらに、human carcinoma A431を皮内移植したヌードマウスを用いて抗腫瘍効果を検討した結果、100mg/kg/day×7daysの腹腔内投与で明らかな抗腫瘍効果を示し、急性毒性はまったく示さなかった。一方、これまでの構造活性相関研究の結果から、bastadin類の活性発現には大環状構造が必須であり、エーテル架橋構造の様式も活性発現に重要であることを明らかにしている。今回、さらに詳細な構造活性相関を検討する目的で計算ソフトを用いてbastadin類のコンフォメーションを解析した。その結果、エーテル架橋構造の様式や分子内の臭素原子置換様式がコンフォメーションの安定化に大きく寄与していることが明らかとなり、種々の類縁体の活性と計算結果を比較検討した結果、このコンフォメーションの安定化が活性発現に重要であることが示唆された。さらに、分子内のオキシム基は活性発現に必須であることが明らかになった。 2)上記のHUVECに対して選択的に増殖抑制効果を示す化合物の探索法用いて、海洋生物の抽出エキスライブラリーからさらに活性物質のスクリーニングを行い、HUVECに対して選択的に増殖抑制効果を示す新規ステロイドアルカロイドcortistatin類やイソマラバリカン型トリテルペンglobostellaric acid類を単離し、その化学構造を明らかにした。また、cortistatin類はHUVECに対して約3000倍、globostellaric acid類は100〜200倍の選択性を示すことを明らかにした。
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