1. がん抗原と免疫応答の解析 1) がん抗原NY-ESO-1に対する免疫応答 コレステリルプルラン(CHP)とNY-ESO-1タンパクの複合体を投与したがんワクチン症例のうち3例についてCD4T細胞の反応を詳細に解析し、3つの新しい認識エピトープを同定した。いずれも、日本人に高い頻度で発現するHLAクラスII抗原に結合するペプチドで、免疫モニタリングおよびがんワクチン作成に有用である。 2) がん抗原XAGEに対する免疫応答 肺腺癌症例について、免疫応答を解析し、特異抗体の産生、CD4およびCD8T細胞の反応を認めた。XAGEの抗原性が強いことを示唆するものと考えられる。これらの結果にもとずき、XAGE抗原を標的としたがんワクチンを開発する。 2. がんの免疫回避機構の解析 1) トランスウェルを用いた遊走試験で、Foxp3^+Treg細胞が、腫瘍に対し他のT細胞よりもより多く遊走することが明らかになった。このメカニズムを解析し、がん細胞産生IL-6によりFoxp3^+Treg細胞のIL-8レセプターの発現が上昇することがその理由であることが示唆された。 2) 一時自然退縮をきたした肺癌症例について、3年以上に亘り臨床経過を観察し、さらに免疫応答を解析した。 この結果、末梢血の制御性T細胞の増加が腫瘍再発に関連している可能性が示唆された。 3. がんワクチン臨床試験の実施 1) 前年度に開始したNY-ESO-1f長鎖ペプチドワクチン臨床試験の患者登録を継続した。 2) 今年度から、新たにNY-ESO-1長鎖複合ペプチドワクチン臨床試験を開始した。
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