細胞表面受容体分子であるFrizzled-7の標的治療法とmRNAを抗原とした樹状細胞療法について検討を行い次の結果を得た。 1) Frizzled-7に対するsiRNAを多数作成し、その中から最も強力な抑制作用を示すものを選んで実験を継続している。Si-RNAによるin vivo抗腫瘍効果を明らかにするために、si-RNA導入stable transfectantsを大腸癌細胞株HCT-116を用いて作成した。本transfectantsは、親細胞と比較して、明らかなコロニー形成の低下、Tcf活性の低下、in vitro浸潤能の低下、wnt標的遺伝子発現の低下を示した。SCIDマウスにおけるHCT-116の肝転移モデルを用いてin vivo効果を検討した結果、siRNA導入transfectantsは明らかな肝転移の減少を示した。これらの成績はFrizzled-7が治療標的として有用であることをさらに支持するものと考えられた。 2) mRNAを抗原とした樹状細胞療法 平成20年9月より臨床研究レベルで肝細胞癌および膵胆管癌を対象にmRNA導入樹状細胞療法を開始した。これまで肝細胞癌および膵癌患者に実施し、明らかな有害事象を認めず、肝細胞癌の1例がCRを示し注目している。引き続いて平成21年3月より細胞プロセシングを使用した同療法を膵胆管癌を対象に開始した。症例は65歳、男性、進行膵癌(術後再発)であり、現在治療を継続中であるが、明らかな有害事象は認めていない。 基礎実験も平行して継続しており、glioma細胞株の脳移植モデルに対するin vivo治療効果を、新たにIL-13Rα2鎖を標的抗原として検討している。これまでのところ、mRNA導入樹状細胞投与群で明らかな免疫エフェクター細胞の脳内発現と抗腫瘍効果が観察されている。
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