本年度は以下の研究成果を得た。 1)IAP(inhibitor of apoptosis protein)の新規分子、リビンが臨床試験に入った。主として腎癌で行い、次に大腸癌で行う。2)バイオインフォーマティックアプローチにより、腫瘍抗原となり得る分子、すなわちCep55、Lengsin、HIFPH3等を同定した。HLA-A24が提示するCTLエピトープも決定した。これらの研究は主にHLA-A24が提示するがんペプチドワクチンカクテル開発のためのものであり、早急に臨床試験を開始する。3)加えるに癌ワクチン抗原性の増強を飛躍的に高める研究を更に進めた。代表的分子シャペロンであるhsp90(heat shock protein 90)やORP150(oxygen-regulated protein 150)が癌ワクチンと複合体を形成し、外から生体に投与した際、樹状細胞(DC)活性化し、効率よくCTLを誘導することが判明しているが、DC内でのsubcellularの機構を解明した。すなわちhsp90により抗原ペプチドが初期エンドゾームに長時間とどまることが判明し、ここでMHC class Iにクロス提示されることが示唆された。4)さらに癌幹細胞をsp(side population)テクノロジーを利用し分離し、ここに発現する腫瘍抗原を分離することに成功した。その代表的なものはSOX2(sex determing region Y-box 2)、SMCP(sperm mitochondrial cystein-rich protein)等であった。SOX-2についてはHLA-A24が提示する抗原ペプチドも決定された。sox-2は乳癌のER(-)、PR(-)、HER2(-)のいわゆるトリプリネガティブのタイプに強発現であり、これらの腫瘍で最初の臨床試験を目指す。
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