研究概要 |
1.ヒストンアセチル化と細胞死との関連性 ヒストンの過剰アセチル化によって、誘導される蛋白質の同定とそれによって生じる様々な生物学的現象との関連性を調べた。すなわち、HDAC阻害剤FK228またはCBHA添加後にアポトーシス誘導能をもつBH3-only蛋白であるBimやBmfが誘導され、それがHDAC阻害剤自身によるアポトーシス誘導能に極めて重要であること、さらに放射線照射後のアポトーシスへの増強効果にも関わることを証明した(Cell Death Diff 2006 ; Int J Radiat Oncol in press)。 2.各種低分子化合物と放射線照射との併用効果 各種低分子化合物の活性酸素レベル上昇能を網羅的に調べた結果、複数の有望な活性酸素誘導分子を同定した。このうちの一つの化合物は生体内にも存在しうるものであり、この前処置によって放射線照射後のDNA障害が増加すること、さらにヌードマウスを用いた生体内においても治療効果を発揮しうることを明らかにした(投稿中)。 3.アセチル化とDNA損傷との関連性の解析 申請者らは、ヒストンアセチル化過剰により放射線照射後のアポトーシスが増強されることを既に明らかにしているが、その機序は不明な点が多かった。そこで、本研究において、機序解析を詳細に行った結果、アセチル化亢進により放射線照射後のDNA障害が増強することを明らかにした。これにより放射線増強効果《アポトーシス誘導》が発揮されるものと思われた(Apoptosis, in press)。上記したBmf蛋白との関連性を含めて、今後、さらなる放射線増強効果を目指して、こうした様々な現象がどのように機能するのかを詳細に解明して行く必要性がある。
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